ことばで言えなければ、
 ないのではない。
 それはそこにある。
 ちゃんとわかっている。
 だが、それが何か
 そこがどこか言うことができない。
 言うことのできないおおくのもので
 できているのが、人の
 人生という小さな時間なのだと思う。
 長田弘「人の一日に必要なもの」
一日を終える 今日のあなたへ 
小さな祝福が どうか訪れますように
滔々と 流れ続けていく川を 穏やかに照らす 
暮れゆく陽の光のように
おやすみなさいの前に 
わたしも ひそやかに祈る
薄い月明かりが 枕元を そっと青く照らす部屋で
時は降り積もり
そして 流れ続ける
溶け合い 混ざり合い 
また 
新たな流れとなって
わたしは わたしの中に 
いくつもの時間の流れを 感じている
降り積もる時と 貫いていく思い
なにものも消えはしない 
今日という日も またその一日の分だけ 
それぞれの過去から 私たちが 離れゆくとしても
川と同じだ、と私は思う
それは 確かに 
そこに、あるままで
「たといまた、わたしが自分の全財産を人に施しても、
    また、自分のからだを焼かれるために渡しても、
 もし愛がなければ、いっさいは無益である」(コリント
13:4
出会いの中で 生まれた写真が 
どうか 届きますように
街の中に 匂いやかな 金木犀の香りが
溶けこむ頃に 書いたことば
* Tamagawa/2011-2014
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